SYOEIMAGAZINE
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2022[Wed]
08.10
設計、現場担当の能勢です。
この「家づくり手帖」は、家ができるまでの設計・現場でのプロセスや、お客様とのやりとりの記録です。
自分の仕事の振り返りはもちろん、
これから家づくりをお考えの皆様に、少しでも参考になれば幸いです!
M様邸概要
木造2階建て、約95㎡
設計期間:2020年8~11月
工事期間:2020年12月~2021年7月(一部追加工事含む)
設計:松栄建設一級建築士事務所
施工:松栄建設株式会社
新しい分譲住宅でのチャレンジ
こちらは白楽から少し歩いた高台にある、4棟の分譲地の中の一棟になります。
建築前の更地の状態
松栄で分譲住宅を作るときは、何か一つテーマを決めて設計をしています。
今回は敷地形状の関係で建物の広さは95㎡程度が限度でした。
限られた面積の中で、
コンパクトでありながら、ゆったりと暮らせる場所が作れるかをテーマに設計を進めました。
具体的に考えたことはこの4つです。
①建物形状をシンプルにし平面的な無駄をなくす。
②扉を最小限にし、一体的で広く感じられる空間にする。
③2階リビングを勾配天井にし、立体的な広さを感じられるようにする。
④場所ごとに変化をつけ、いろんな場所を作る。
シンプルであることの大切さ
松栄の建築の基本として、とにかくシンプルに作るということを大切にしています。
プランを描く段階から、頭の中で立体的にイメージをして、
平面だけでなく外壁や屋根の形状もシンプルになるように心がけています。
シンプルにするメリットは建築費が抑えられるだけでなく、
将来のメンテナンスコストを抑えることができることです。
特に外壁・屋根のメンテナンスは形状が複雑なほどコストがかかります。
また、シンプルな方が雨水の侵入リスクも低く、構造的にもバランスが良くなるので、
耐久性が高い住まいを作ることができます。
シンプルにつくることは、しあわせな住まいづくりの基本になります。
広く感じられるオープンなプラン
2つ目の工夫は扉の少ないオープンプランです。
階段を上がってすぐが2階のリビングになっています。
扉を作らないことで廊下がなくなるため、空間的に広く見えるというメリットがあります。
扉がないと気になるのは冷暖房ですが・・・
断熱性能を上げることで、部屋が一体的になっていても冷暖房のロスが出にくい設計になっています。
どうしても気になる場合は、後付けで開口を塞ぐロールスクリーンを設置することも可能です。
こちらは温熱シミュレーション結果です。
外気温2.6℃の条件で、右のH28年基準の家と比べ、左の設計案は4~5℃程度室温が高いです。
※左(設計案)の断熱性能を示すUA値は0.5程度です(HEAT2020のG1とG2グレードの間)
断熱性能だけでなく日照もシミュレーションをしています。
今回は2階の角が日照もよく眺望も開けているので、角にバルコニーと大きな窓を設けました。
立体的な勾配天井
3つ目の工夫としては、屋根形状を活かした勾配天井にしていることです。
天井の高さを上げることで、体感的には実際の広さ以上に広く感じることができます。
不動産の情報サイトでは、面積と部屋の数が広さの判断基準になると思いますが、
実際には立体的な空間の豊かさも重要です。
リビングに面したいろんな場所の作り方
そして、4つ目の「いろんな場所をつくること」について。
コンパクトでオープンなプランは、一歩間違えると変化が少なく単調になりがちです。
この住まいでは、リビング周りにおいて様々な設計上の工夫をしています。
例えば、リビングの一面にはグレーのアクセント壁と造作カウンターがあり、
一室空間の中にもちょっとした変化がつけられています。
リビングの角にはTVの設置スペースとして少し凹んだスペースも。
リモートワークにも備え、扉付きの3畳のワークスペースもあります。
キッチンの奥には扉無しのパントリー。
キッチンの天井高さはリビングの勾配天井より低くすることでメリハリをつけています。
2階リビングの入り口には手洗い用の洗面を設けました。
こういう場所も空間のアクセントになります。
洗濯機スペースも家事動線に配慮してキッチンから近いところに設けています。
後付けのロールスクリーンで隠せるようになっています。
耐震等級は最高グレードの3です。
断熱と構造は後からの改修が大変なので、しっかりと性能を確保しています。
こちらは基礎完成後の写真です。
第三者検査も入れて、見えなくなるところもしっかりと施工をしています。
床下にはしっかりと断熱材が入っています。
こちらは上棟直後の様子。
できるだけ左右対称にするなど、構造のバランスにも配慮した設計をしています。
上棟後全景。
屋根にもびっしりと断熱!
造作もできて、残るは内装工事です。
完成後は、販売に向けて家具を入れるステージングも行いました。
松栄では初の試みです。
家具が入るとやっぱり雰囲気が違います。
購入されたお客様と打合せを行い、お引渡前に追加工事も行いました。
パントリーに可動棚を追加したり、
1階の洋室に可動棚付きのウォークインクローゼットを作ったり
洗面下に収納台を追加したり。
どんなインテリアが入るのかを楽しみにしながら現場を進めていきます。
設計や現場の仕事をしていて一番面白いのは、
自分たちが作った家で、お客様がどのような暮らしをされているか見れるときです。
建った時の「がらんどうな家」を見た時の感動・達成感はもちろんありますが、
実際に家具が入って、そこでの生活が見えるようになった時が、
家にとっても一番しあわせな時間だと思っています。
そんなしあわせな時間を過ごせる家を、ひとつひとつ丁寧につくっていければと思います!
設計・現場担当 能勢
お住まいになってからのインタビューはこちらをご覧ください。